自営業の生活防衛費を厚めに考える理由の一つは、働けなくなったときに使える制度の違いです。はち金の基本は、まず生活費6か月分を目標にすること。そのうえで、給付や家族の収入でまかなえない部分を預金で備えます。
大切なのは、「会社員」「自営業」という呼び名だけで決めず、実際に加入している健康保険と雇用保険を確認することです。
1. 病気で休むときと、離職後の仕事探しを分けて考える
⑴ 業務外の病気・けがで働けない
- 会社員で確認する制度
- 健康保険の「傷病手当金」
- 市区町村国保の個人事業主本人の場合
- 同様の所得補償は原則なし。加入先の独自給付を確認
⑵ 離職後、働ける状態で仕事を探す
- 会社員で確認する制度
- 雇用保険の「基本手当」
- 市区町村国保の個人事業主本人の場合
- 事業主本人としては原則、雇用保険の対象外
職業名だけで決めず、加入制度と給付条件を確認します。入金までの期間や不足分にも備えましょう。
給付には加入状況や支給要件があります。以下は、協会けんぽ等の健康保険に本人として加入する方と、雇用保険の一般被保険者を中心とした整理です。
2. 会社員が知っておきたい2つの制度
⑴ 病気やけがで働けないとき:健康保険の傷病手当金
被用者保険の被保険者本人が、業務外の病気・けがで働けず、連続3日間の待期を終えた後の4日目以降など、要件を満たすと対象になります。休業中の給与が支払われないことが基本で、給与が手当額より少なければ差額が支給されます。
支給額は、標準報酬月額を基準に計算した日額のおおむね3分の2。支給期間は、同じ傷病について支給開始日から通算1年6か月です。申請から入金までの生活費や、給付で不足する分は預金で備えます。協会けんぽ:傷病手当金
⑵ 離職後、働ける状態で仕事を探すとき:雇用保険の基本手当
基本手当は、離職後に求職の申込みを行い、働く意思と、いつでも就職できる能力があり、仕事を探している方のための給付です。原則として、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることなどが必要です。※1
受給手続き後には7日間の待期があり、離職理由等による給付制限や失業認定もあります。金額・支給日数にも限りがあり、退職後すぐに給与の全額が補われる仕組みではありません。ハローワーク:基本手当・雇用保険法第21条(待期)
病気で今すぐ働けない場合の備えは、この基本手当とは分けて考えます。 受給期間の延長や、別の給付の対象になるかをハローワークで確認しましょう。※2
3. 自営業は、給付で埋まらない分の預金を厚めに考える
市区町村の国民健康保険に入る個人事業主本人には、会社の健康保険と同じ傷病手当金は原則ありません。国保の傷病手当金は条例・規約による任意給付なので、国保組合を含め、実際の加入先に独自の制度があるかを確認します。国民健康保険法第58条
雇用保険は、雇用される労働者を対象とする制度です。個人事業主として働く本人は原則対象外で、事業の売上が減ったり、廃業したりしただけで基本手当が出るわけではありません。兼業先での雇用関係や、以前の雇用保険の受給資格などが関わる場合は、ハローワークで確認します。雇用保険法第4条
収入の波や、仕事を休むと売上も減る可能性を考え、生活費6か月分を出発点に、不足を埋める預金をさらに厚くすることも検討しましょう。
店舗の家賃・仕入れ・事業の返済などに備える事業運転資金は、家族の暮らしを守る生活防衛費とは分けて見積もります。同じ預金を、両方の備えとして重ねて数えないようにします。
4. わが家で確認したいこと
- 加入している健康保険と雇用保険、使える給付の条件
- 給付が入るまでの生活費と、毎月不足する金額
- 一方の収入が減った場合の家族の収入、復職・再就職までの見通し
会社員も自営業も、生活防衛費は必要なときに引き出しやすい預金で用意します。まずは加入制度を確認し、生活費6か月分の目標に、どれだけ追加の備えが必要かを考えましょう。
短い補足と出典
確認日:2026年10月17日
※1 倒産・解雇等の特定受給資格者、特定理由離職者は、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上でも対象となる場合があります。期間の数え方・離職理由・年齢等による条件は、ハローワークの受給要件で確認します。 本文へ戻る ↑
※2 求職申込後に病気・けがで働けなくなった場合には、雇用保険の「傷病手当」等の対象になる場合もあります。健康保険の「傷病手当金」とは別の制度です。受給期間の延長を含め、ハローワークの受給期間延長の案内・雇用保険法第37条(傷病手当)で確認します。 本文へ戻る ↑
- 協会けんぽ「傷病手当金」:待期・給与との調整・金額・通算支給期間。業務上・通勤災害、被扶養者、任意継続中に新たに発生した傷病は対象に含まれません。加入期間が短い場合や退職後の継続給付などは別の条件があります。
- ハローワーク「基本手当について」:受給資格、働く意思・能力、金額・日数、受給期間延長。雇用保険の傷病手当は、雇用保険法第37条で別途確認。
- e-Gov:国民健康保険法第58条第2項:傷病手当金は条例・規約に基づく任意給付。
- e-Gov:雇用保険法第4条・第21条:被保険者の定義と7日間の待期。
- 6か月分という目標は、はち金の編集方針です。本人の収入・家計の実額や、特定商品の推薦は記載していません。